2004年
パタンナー
若手では珍しいフリーのパタンナーに
アパレル企業やブランドには所属せず、事務所“(pour la)toile”(プーラトワル)を立ち上げ、現在フリーのパタンナー(外注パタンナー)として活動する水上朋史さん。現在は“fur fur”“wizard”をはじめ、幅広いブランドの仕事を請け負っている。通常フリーのパタンナーは、企業で長年キャリアを積んだベテランが独立してなることが多く、水上さんのような若手は珍しいのだとか。「もともと『とにかくいろんなパターンを引きたい』と思っており、いつかフリーになりたいとは思っていました。予想よりこんなに早く夢が実現できたのは、人の縁とつながりに恵まれたお陰だと思っています」
デザイナーの意図を汲み取ることが第一歩
フリーのパタンナーへの、仕事のオーダーのされ方は実にさまざま。レディース・メンズで多少事情は異なるが、細かい仕様書*に忠実にパターンを起こすこともあれば、イメージ画と参考写真からパタンナーの感性で形を展開することが求められるなど、すべてはデザイナーのやり方次第。「デザイナーさんとは一緒の場所で働いていないので、短い打ち合わせで相手の意図をどう汲み取るかは未だに苦労する部分です。かといって、質問攻めにするのもしつこいので、その人の服装を見たり、趣味の話をしたりして『こういうテーストが好きなのかな?』と、仕事には直接関係ない部分から情報を読み取ることもあります」
人を遠隔操作することの難しさ
水上さんがパターンをやっていて一番楽しいのは「全体の形を決めるとき」。形を出した後は、縫製工場の人にイメージ通りに縫ってもらうよう仕様書を作成するが、ここが外注パタンナーとしての力の見せどころだ。「工場の人とは直接話せないことが多いので、パターンと仕様書で言いたいことを伝えなければなりません。指示は書こうと思えば無限に書けるのですが、細かく書きすぎても言いたいことが散漫になるので、間違いやすいポイントを押さえる程度に書いています。仕様書の書き方には気をつけないと、とんでもないものが上がってきてしまうので責任重大です」
今はいろんなものを見聞きし、引き出しを増やす時
外注という立場上、パターンを納品したら仕事は終わりで、最終的な形は見られないことがほとんど。でも水上さんは、「僕の場合はまずパターンありきというか、パターンを引ければそれで満足なんです」ときっぱり。今後は、フリーとして働きながらプロのパタンナーのための学校に通い、さらに知識や技術を磨いていく予定だ。「個人で仕事をしているとひとりよがりになりがちなので、今はもう少しほかの人の意見も聞きたいという思いがあります。パターンは人によってやり方や考え方が違うので、いろんなものを見聞きして自分の引き出しを増やし、どんな仕事にも柔軟に対応できるようになりたいです
プロのパタンナーとして常に向上していきたい
最初はデザイナー志望だったが、「結局、絵ではどうにもならない部分もある」とパタンナーになった水上さん。パターンを引いていられれば幸せで、「正直営業は得意ではありませんが、事務所を立ち上げた今後はその辺が課題かもしれません」と言うが、「口先だけで仕事を取っても、そういうものはやがて消えてしまうのではないかと思います。『自分はパタンナーなんだ』という原点は忘れないようにしたいですし、妙に世渡り上手になるのではなく、自分のやった仕事で新しい仕事を取るのが理想。不器用かもしれませんが、そのためにはパタンナーとして常に向上していかなくてはと思います」
※この取材内容は2009年5月時点のものです。
【参照元】文化服装学院HP Next