2001年
生産管理リーダー
“COCO DEAL”
ブランドが成功するか否かは生産管理の采配次第
スケジュールや予算の管理をはじめ、服に使用する素材や縫製工場の選定など、消費者の心を掴むアイテム作りのために、ブランドを影で支える生産管理という仕事。ファッションブランド“COCO DEAL”の生産管理リーダーを務める村瀬史憲さんは、限りある予算の中でいかにクオリティの高い商品を作るかというミッションと日々戦っている。「生産管理は利益に直結する部分ですし、どの縫製工場に依頼するかよって品質も大きく変わってきますから、アパレル企業の中では非常に重要なポジションと言えます」
コストは下げても、絶対的な品質は守りたい
2008年2月にデビューした“COCO DEAL”は、25歳前後の女性がターゲット。トレンドを取り入れたアイテムが、リーズナブルな価格で手に入るのが特徴だ。縫製を行う工場は日本、韓国、中国、インドにあるが、現在比重が大きいのが中国。村瀬さんは2~3カ月に1回のペースで中国に出張し、工場の新規開拓や既存の工場の品質管理を行ったり、生地市場で素材探しをしたりするという。「一番難しいのは、品質とコストのバランスを取ることです。工場と協力しながら、コストは下げても絶対的な品質を守れる生産体制を作っていくことが生産管理の肝だと思います」
パタンナーから生産管理へ
実は、村瀬さんは元パタンナー。パタンナー時代はミリ単位の寸法にこだわっていたが、今は全体的な効率を考える立場ゆえ、逆にパタンナーのこだわりをコントロールするのが役割。いわばパタンナーと生産管理は相反する仕事だが、「ものを作ることはもちろん好きですが、生産管理は自分に合っていると思います」と村瀬さん。「もともと理系なので数字が好きで、パタンナーのときから自分の仕事でどれくらいの利益が上がるかに興味がありました。あと、こう見えて割と計画的で(笑)、学生時代も朝一番に学校に行ってミシンを取って、課題は学校で終わらせて夜は遊びに行くタイプでした」
パタンナーの経験を生かし、一歩踏み込んだ生産管理を
また、「パタンナーとしての経験は、生産管理の仕事にすごく役立っています」と村瀬さん。たとえば中国の縫製工場でサンプル品のチェックをするときも、ただ口で指示するだけでなく、ミシンからボビンを出して下糸の調子を確認したり、使っている糸の質を見たりなど、パタンナーをやっていたからこそ深く見られる部分があるとか。「そうすると工場の人も信頼してくれますし、こちらがどれくらいの品質を求めているのかが具体的に伝わると思います。また、用尺*が頭に入っているので、生地幅に対してパーツがいくつ取れるかがだいたい分かり、見積もりを出すのもスムーズです」
世界一安価で、高品質な商品作りを目指す
現在、村瀬さんは生産管理リーダーとMDを兼任しており、休日には街でトレンド分析をしたり、競合ブランドのショップを見たりして過ごすことが多いそう。「休みでも、ついつい仕事をしてしまいます。競合店でマネキンが何を着ているか、店頭のニットとカットソーの割合がどれくらいかなどを手帳にメモして、COCO DEALが勝てる部分はどこかを常に考えています」。将来的には、今より安価で質のよい商品が出来る生産体制を作り、他ブランドを圧倒する完成度のアイテムを提供したいと語る村瀬さん。「1枚3800円のTシャツでも、市場の同じ値段のアイテムの中で一番いいものを出せる生産体制を作ること…それが自分の使命だと思っています」
※この取材内容は2009年6月時点のものです。
【参照元】文化服装学院HP Next