エディトリアルデザイナー
SKETCH
好きな仕事ができる充実の日々
佐々木さんが所属するスケッチは、エディトリアルデザイナー・志村謙さんが代表を務めるデザイン事務所。約半年前、事務所の立ち上げとともに採用された佐々木さんは、志村さんの教えを受けながら雑誌やムックのデザインを行っている。既に、佐々木さんが中心となって動く仕事もあるようだ。「ずっと出版物のデザインがしたかったので、スケッチへ来てやっと夢のスタートラインに立てたという感じです。でも分からないことがまだいっぱいあり、ほかの雑誌や本のデザインを見ては『こうすればかわいくなるのか』『私が悩んでいたのは、こんなに簡単なことだったのか』と後で気付くことばかり。でも、好きなことができる毎日はとても充実しています」
就職をやめ、デザインの勉強を決意
洋服が大好きで、スタイリストになりたいと文化に入学した佐々木さん。だが2年次のコーディネート論の授業が、夢をエディトリアルデザイナーへと変えた。「あるとき自分の雑誌を作るという課題が出たのですが、写真や文章を組み合わせる楽しさに夢中になりました。デザインや製本は自己流でしたが、雑誌作りってなんておもしろいんだろうと思いました」。当時佐々木さんは就職活動を行っていたが、メディア業界に詳しい先生から「エディトリアルデザイナーを目指すなら、勉強し直したほうがいいんじゃない?」とアドバイスを受け、グラフィックデザインの専門学校に入り直すことを決心した。「学校には2年間通い、ソフトの基本操作からページの組み方の基礎、イラストや立体物の制作、色彩学など幅広い知識を身につけました」
理想と現実のギャップに直面
学校を卒業後はデザイン事務所に入った佐々木さんだが、手掛けるのはチラシやパンフレットで、憧れの雑誌とは程遠い世界が待っていた。「当時は勉強不足で、デザイン事務所に入れば雑誌の仕事ができると思っていたんです……。ずっと"石の上にも3年"と自分に言い聞かせましたが、『このままでは、本当にやりたいことができなくなる』と2年弱で辞めることにしました」。そして転職活動を始めた佐々木さんだが、ここで新たな現実が立ちふさがる。エディトリアルを手掛ける事務所は、採用条件にInDesign(インデザイン)*の使用経験を求めることが多いが、佐々木さんは学校でも職場でも触れたことがなかった。「私が専門学校にいたころインデザインはまだ主流ではなく、職場でも使っていなかったので学ぶ機会がありませんでした。仕方のないことですが、くやしかったです」
思わぬところから開けた道
その後、佐々木さんはペット用品メーカーに転職し、カタログのDTPオペレーターや、途中からは文化での知識が買われプロダクトデザイナーとしても活動。またエディトリアルデザインから遠ざかってしまうかに思えたが、そんなとき知りあいからデザイナーの志村さんを紹介される。事務所開設を予定していた志村さんは若手デザイナーを探しており、佐々木さんはその熱意が買われ見事採用される。「あとから聞いた話ですが、代表は次世代のデザイナーを育成したいと考えていたようで、私がインデザインを使えないこともすべて承知で雇ってくださったようです。入社直後からみっちりと学べる環境をつくっていただき、いち早く即戦力になれるよう指導してくださっているのには感謝しています」
ファッションや物作りの本に携わりたい
デザイナーというと激務、締め切り前の徹夜といった言葉をイメージするが、スケッチは志村さんの方針により規則正しい勤務形態で完全週休2日制。仕事はほぼ定時で終わるため、佐々木さんはデザインの引き出しを増やすため、会社帰りに書店や図書館に立ち寄ることも多い。「事務所から少し遠くても、雑誌のバックナンバーが充実している図書館にはよく行きますね。あと散歩も好きなので、デザインに煮詰まると二駅分くらい歩いて、頭をすっきりさせてから帰るようにしています」。佐々木さんの夢は、まだ始まったばかり。将来はファッション誌や物作りの本のデザインを手掛けたいと目を輝かせる。「そしていつか、1冊の雑誌や書籍の世界観を手掛けるアートディレクターになれたらいいですね」
【参照元】文化服装学院HP Next